東日本大震災から10年が経過した今でも、原発被災地の帰還困難区域の人々は未だ故郷に帰ることができていません。世間から取り残されてしまうという疎外感を少しでも和らげるメディア表現に取り組み、アイディアを発展させる中で、被災地から遠く離れた人々が想いを馳せる仕掛けを考えました。
本作品は量子論の多世界解釈にインスピレーションを受け、「今・ここ」と、「時空を超えたどこか」をつなぐことで、当事者へ思いを馳せる仕掛けとしています。空間の重なり合いを表現するため、段ボールで空間の箱を制作し、マイクロコンピューターArduinoとアプリ制作webサイトを用いてプロトタイピングしています。段ボール箱で区切られた空間の中に入ることで、「いつか・どこか」にいる自分を表現。その空間の中にあるQRコードにアクセスすると、「9次元郵便局」のサイトから、時空を指定した「いつか・どこか」にいる自分へとメッセージを送ることができます。このメッセージは、「遠いどこか」の自分から、「今・ここ」の自分へと送られたメッセージです。自分が今いる時空と、別の時空へ思いを馳せることで、自らの世界を拡張できる-今ここにしか意識の向かない状態から、当事者へも意識を向けるきっかけにすることを意図しています。
・問い合わせ先:iedp@edu.k.u-tokyo.ac.jp
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