11月21日に行われた、地域活動デザインスタジオの最終講評会のレポートです。
鈴木亮平先生の指導の下、4月から半年をかけて、じっくり進めてきた地域活動デザインスタジオ。
コロナ禍の影響でフィールドワークが難しい時期が続きましたが、学内の活動制限レベルが下がってきた段階で、調査に基づく実践も行い、提案へと落とし込みました。
郊外に空地ができてくる中で、空地のままいかに地域の人が生かし、地域にプラスになるように活用していくか。自然を残していくのか?
対象地は、柏市みどり台と増尾にある2つの「カシニワ」。
それぞれでチームを組み、柏市の空地活用を推進する「カシニワ」制度の創設から10年が経った今、担い手の世代交代の必要などの課題がある中、これから地域でどう生かせるか?を考えてきました。
今回の最終発表会には、元·柏市役所職員でカシニワ制度の創設に関わられた細江さん、柏市の市民活動団体チーム·ばんばんの方にもお越しいただきました。
各チームから、調査段階から実際に手を動かして考えたこと、提案について説明をしてもらいます。
みどり台チーム「住民の『やってみよう!』を引き出し、実現できる場へ」
対象地は柏市みどり台2丁目にある、鈴木先生が代表を務めるNPO法人balloonが管理を行うカシニワ「ふうせん広場」です。
地元小学生と広場を活用してきたものの、現在は活動を停止しています。
「ふうせん広場を再び地域の場として活用し続けるには?」をテーマに、周辺住民の方へのヒアリングから課題を洗い出し、
2つの町会の境界に位置するふうせん広場を、公園とは違う自由な空地として活用することを提案しました。
事前調査に基づき、実践段階では「地域ニーズ調査」「広場に率先して関わってくれる人を見つける、より多くの人が関われる広場デザイン」、「具体的な広場のゾーニングと管理運営の検討」の3段階で進めました。
検討·実践段階では、高齢者も手入れのしやすいレイズドベッド(高床式プランター)や地植えでの放置栽培の可能性も実験。
さらに住民の方々の参加を得て、開催した2回のワークショップでは、広場を活用するためのかまどベンチ、畑·花壇のゾーニングと、
実際に使ってもらったり、設備づくりに関わってもらう中でふうせん広場を周知し、自由に利用できることを感じてもらいました。
後の管理提案では、広場を周知し使われ方を模索する初期(現在)から、スタジオを通して学生が関わりながら可能性を探る移行期、住民が活動を生み出す定着期の3段階を想定しています。
チーム·ばんばんの方からは、今回の一連の活動により、ふうせん広場が使えることが認識できたこと、
今回の学生の情熱から刺激を受けて、地元の団体との連携や活動のアイディアが広がっていることをお話しいただきました。
寺田徹先生からは、カシニワ共通の課題である、将来的な広場管理のあり方に見通しを立てたことが評価されました。
現状の団体がずっと管理はできない中、緩やかに管理主体や広場のコンセプトを変化させていく、持続的な運営体制への可能性が指摘されました。
増尾チーム
増尾チームの対象地·里山広場は、増尾地域に存在するカシニワで、増尾の里山を守る会によって管理されています。
管理団体メンバーの高齢化で自然環境の管理が難しくなってきた中で、どのように管理をしていくのかを提案しました。
「ひまわり畑跡」(元々ひまわり畑になっていた所、管理負担が大きかったことから草原)、加工品を販売することもある「ラベンダー畑」、芋煮会などの地域交流拠点にもなっている「芝生·畑·ベンチ」の3エリアから成る、広々とした広場です。
現地の観察やへの里山を守る会の方·住民の方へのインタビューのほか、新興住宅地の住民の方へアンケート調査を実施。
カシニワ制度が知られていることや、時間があれば地域活動に参加したい人、地域の自然に関わる活動に関心がある人も一定数いることがわかりました。
調査から、里山広場の持続的な維持·管理に向けて、新興住宅地の子育て世帯を主な対象に、里山広場を利用しても良い場所と周知するきっかけを作り、「自分たちの庭」と感じてもらうことで、将来的な管理に参加する道筋を描きました。
里山広場への愛着形成を促すため、ワークショップを開催。
オリジナル羽子板作り、里山を守る会の方からのミニレクチャー、里山広場の未来を考えるワークショップでは、自分が取り組めることを考えてもらいました。
ここでは、里山広場で身近な自然との触れ合いなどの思い出が数多く共有されたほか、未来のための具体的な行動として、新たな情報発信や、若年世代が参加しやすい休日の定例活動、不定期での手伝いなどの活動方法の変化が挙げられました。
実際に、このワークショップで得られた結果から、増尾の里山を守る会の活動の間口を広げるため、活動日に日曜が追加されたり、新たなイベントが実施されるなどの変化があったということです。
最後の提案では、スタジオを通じて学生が介入する段階を経て、里山を守る会の活動を開く方向、
さらに里山広場にはプレーパークや休憩スペースを整備し、より親しみやすい空間プランニングを描きました。
総評として、鈴木先生からは地域によって学生が入ることの受け止め方が違うことや、
カシニワという市民管理による暫定利用の制度において、提示できるポイントや仕掛けがいくつも見られたことが評価されました。
細江さんからは、両班が行ったカシニワのワークショップやアンケート調査の中で見出した「カシニワの利用の仕方が分からないと」いう点を制度設計側は認識できていなかったという気づきがあり、そこに活動を通してアプローチできたことを評価していただきました。
当初予定よりも長丁場のスタジオになりましたが、継続的に住民の方と実際に関わり、活動しながら提案を行うという実践を含んだプログラムは、学生たちからも「初めてで良い経験になった」「楽しかった」という声、「活動団体の中心になっている人の感情、考えに寄り添うことの重要性を実感した」などの声が聞かれました。
今回が地域に入って活動することが初めてという学生が多かった中、仕掛けを考え実践することで、住民の方へも刺激を与えられたことが伝わって素晴らしいと思いました。
皆さん、お疲れ様でした!
(柏原)