最後の追い込みを見せた、最終発表会!

  • 情報環境デザインスタジオ

10月1日に実施された、情報環境デザインスタジオの最終発表会のレポートです。

夏学期から期間を伸ばして続けられてきた、情報環境デザインスタジオ。
10月1日、いよいよその成果を見せる最終発表会が開催されました。
「社会実験構想学」共同研究のコラボスタジオとして、イノラボの皆さんにも見守っていただきました。
今回の最終講評では、引き続き木村平さん、藤木隆司さん、渋谷謙吾さん、岡田敦さんにお越しいただきました。
 
9名の学生たちは、それぞれスライドでの発表と、3分以内の映像を準備し、全体で10分以内にまとめての作品発表を行いました。
 
確定案の概要は以下の通りです。

インスタレーション「つながる」

2種類のセンサーを使って、身体と映像を連動させた作品。
「誰にでも帰りたい場所がある」をテーマに、距離センサーを使って身体の動きと、月から来たウサギの動きを連動させ、ストーリーテリングを行いました。
月から降り立つウサギ、ウサギを月へ送り返す流れを、身体の動きとPC画面上のコマ撮りアニメがつながっています。

もう一つは、心拍センサーを使って、脈拍で震災の写真が瞬間的に切り替わる「心拍×フラッシュバルブメモリ」です。
感情が心拍に現れるのを利用し、感情とのインタラクションで画像をどんどん切り替える作品です。

9次元郵便局

量子論の多世界解釈にインスピレーションを受け、「今・ここ」と、「時空を超えたどこか」をつなぐことで、当事者へ思いを馳せる仕掛けとする作品です。
空間の重なり合いをプロトタイプとして表現するため、段ボールで空間の箱を制作。
その中に入ると、「いつか・どこか」にいる自分。
その空間の中にあるQRコードにアクセスすると、「9次元郵便局」のサイトから、時空を指定した「いつか・どこか」にいる自分へとメッセージを送れます。
このメッセージは、「遠いどこか」の自分から、「今・ここ」の自分へと送られたメッセージ。
自分が今いる時空と、別の時空へ思いを馳せることで、自らの世界を拡張できる-今ここにしか意識の向かない状態から、当事者へも意識
を向けるきっかけにすることを意図しています。

目ノ戸

「とりまくもの、無意識の空気として忘れたくない光景を日常に取り込む」から始まったプレゼン。
窓の語源となった「目の戸」をタイトルに、ある空間と別の空間をつなぐ開口部から広がる日常を提案する作品です。
窓枠のガラス窓の向こうにディスプレイを挟み込み、自分の大切な場所、忘れたくない場所の今を写す、シンプルな仕組みを想定。
詩的な印象を残す映像と共に、「目の戸」から広がる世界観を作り上げました。

家へ帰ろう〜Go Home〜

「3.11」という数字の持つ文脈に焦点を当て、帰還困難区域の人がまだ帰れていないことを、ゲーム的な世界観で伝える作品。
スタートからゴール(家)まで「3.11」を拾いながら走っていくものの、家の手前で橋が落ちることで、目の前にある家に帰れない。
ただそこから振り返り、時間を遡る形で自分のこの10年を振り返ることを表現しています。

帰還困難区域の人にかかわらず、「待ち遠しさ」「疎外感」を持つ人々の求める「共感」をテーマにした作品。
「他人は自分を映す鏡である」をコンセプトに、表情キャプチャのプログラムを使って、自分が笑顔になることで、ディスプレイの中の人を笑顔にします。
自分と同年代の人だけでなく、赤ちゃんやお笑いコントの画像も使ったバリエーションも検討することで、老人介護施設での表情リハビリへの展開可能性も示しました。

どこでもプランター

野菜・植物を育てたいけど場所がない人と、土地があるけど借り手がない、あるいはセキュリティ上の問題で人が入れない遊休空間をつなげるシステムの提案です。
センサーを使って植木鉢の水の状態を検知、Twitterでセンサーの値や写真を共有し、ユーザーが遠隔操作で水やりを行います。
広げていけば、シチリア島のレモン栽培も日本からできるかも!?

Nothingness 無

人がいたところが、自然に押されて動物が闊歩している。
そんな帰還困難区域の現在の風景への衝撃から生まれた作品。
空、山、牛、という、「何もない」という風景を気づかないうちに印象付けるために、その風景を背景にして牛をジャンプさせる「Moosic」というゲームを作りました。
リアルな写真の風景の中で、イラストの牛を音楽に合わせてジャンプさせます。

しんぱくシンパシー

「疎外感を解消する」という今回のスタジオ課題から、言葉以外のコミュニケーションとして、脈拍を使った装置を使った、新しい交流を提案する作品です。
2人が脈拍センサーに指を繋ぐことで、2人の脈拍が混ざり合い、 PureDataを通して不思議な電子音が流れ出します。
つなぐ人によって違う音が流れ出すことで、脈拍を通した不思議なコミュニケーションが出来上がりました。

被災地の復興状況の可視化

「10年近く経って、まだ復興がこれだけなのか・・・」
その課題意識にストレートに向き合った作品です。
帰還困難区域の人々が、復興状況がわからない中で抱える不安を和らげるために、GISを用いた可視化の方法を提案しました。
行政が公開しているPDFから表を読み取ってCSVファイルに変換、さらにそれをGIS上で可視化するというプログラムを作成しています。

今回の集大成、それぞれ大きくジャンプした部分があり、これまでで一番盛り上がりました!
最後に、イノラボの4名の方々からそれぞれ1つずつ気に入った作品を「イノラボ賞」として発表していただきました。
岡田さんは「9次元郵便局」、藤木さんに「つながる」が選ばれたほか、「目ノ戸」はなんと渋谷さんと木村さんのダブル受賞!
この中から「目ノ戸」と「つながる」提案が、そのコンセプトが評価され、実装に向けた検討に進んでいきます。

(柏原)