4月23日。情報スタジオの2回目は、2限の時間に佐々木遊太先生から「企画の考え方」についてレクチャ、その後コラボスタジオ企画として、小林博樹教授、イノラボの渋谷謙吾さん、岡田敦さん、藤木隆司さんを招いての「公開会議」がありました。
レクチャでは、企画を考えるにあたって肝となる3つの考え方「何を」「誰に」「どのように」、
さらに何より自分起点で「どうなって欲しいか」を考えることの大切さ・強さを教えていただきました。
特に佐々木先生の関わられたプロジェクトで、この3つ+αの視点で解説していただきます。
ひたすらインプット&検討した後に、ジャンプを呼ぶためのルーティーンなども交え、「企画を考えること」の具体的なイメージを持つことが出来たのではないでしょうか。
そして続く3限は、「何を」「どのように」伝えるかを考えるための公開会議です。
冒頭、小林博樹先生から原発被災地域の帰還困難区域、福島県浪江町に現存する課題についての話題提供をいただきました。
ご自身の幼い頃からの動物への関心から、線量の高い地域で動物がどのように過ごしているのかを知りたいという思いから、リアルタイムでネットワークを介して身近に感じられるインターフェースを開発された経緯や進行時の苦労をお話いただきました(参照:被爆の森のライブ音)。
そして、現地の方々が震災後10年経って、現地の状況を伝えるメディアが少なくなり、世間から忘れられてしまうと疎外感を持たれている-世間や社会における自分たちの立ち位置に不安を抱かれていること。
この疎外感をいかに和らげられるか?
そしてより大きな文脈では、コミュニケーションにおける発信者側の意図と、受け手側の感じ方のギャップを、いかに小さくできるのか?
これらの疑問を、話題提供していただきました。
続いてイノラボの渋谷謙吾さんから、この「伝わらない」という抽象的なテーマを前にして、いかに分解して提案に繋げられるのか、「自分ならこう考える」というプロセスを説明していただきました。
何が問題なのか?を分解し、どうなったら良いのかを幾つも考え、その中で評価基準を設け(根拠はあるか?他の大きな共通課題の有無?etc.)ながら洗練させ、技術で解決できること、そして、その問題解決そのものを価値に変えられないか、価値を感じてくれそうな人はいるか?
こうした問いを重ねるプロセスを使って、具体的に考えたアイディアも示していただきました。
ここから岡田敦さん、藤木隆司さんも加わり、ディスカッションでさらに深めていきます。
・帰還困難区域を扱う際につきまとう「不謹慎さ」問題。様々な価値観を持つ人が議論をして行くことが重要という指摘に加えて、現地に近づくと開き直っているという話。色々な人を巻き込んで行くあり方に繋がるのではないか?
・「疎外感」を感じないために、想像力で補完できないか?浪江町の人にささやかに伝えられるもの、今だから伝えられるものはないか?長い間解決していない問題に対して、それぞれが自分の生活スタイルをたもって過ごしているが、それでも「自分は忘れられていない」と感じられる何かを作れないか?はっきりした主体、メッセージがない、柔らかい持続的なコミュニケーションの可能性とは?
・自分の根幹の課題意識と、社会課題の接続を意識することが大切。
最後に学生との質疑を経て、公開会議は終了しました。
帰還困難区域における「忘却に抗うメディア表現」という課題に取り組むにあたり、課題の切り分け方のヒント、企画立てへ向けたコアとなる問いやプロセスについて、これから学生が企画を立てて行くにあたり、とても参考になったのではないでしょうか。
次回へ向けた宿題は、情報スタジオで作りたい企画の、「何を」「誰に」明確にして行くというもの。ただし「自分が心から面白がれること」であれば、帰還困難区域に関係がなくても良い、という注釈付きです。